これまで中東問題を時系列に沿って説明してきました。中東問題は今でも続く根深い問題なので、ぜひ1つずつゆっくり理解していってください。分からなくなったら1つ前の記事に戻って復習してから読み直すと理解度が増します。
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【世界史】教養として知っておきたい『中東問題』①:中東問題のはじまりと付随する民族問題前回までのお話はこちら
【世界史】教養として知っておきたい『中東問題』②:スエズ運河を巡る争いと第二次中東戦争・第三次中東戦争が起きるまでの流れ
1964年にエジプトのナセル大統領などの支援を受け、イスラエルによって占領されたパレスチナに住むアラブ人解放を目指す武装組織「PLO(パレスチナ解放機構)」が結成されました。これは、第三次中東戦争によってパレスチナ難民が生まれ、そのパレスチナ難民の救済のためにパレスチナの奪還を共通の目的として近隣の部族同士が手を組んだものです。
70年から80年代は当時の指導者アラファト議長に導かれ盛んにゲリラ活動を行なっていましたが、90年代には中東和平に転じてイスラエルとの二国家共存に踏み切り、パレスチナ暫定自治政権を樹立するところまで持っていきました。今回ご紹介する内容は、PLO結成当初のお話になります。
イスラエルは、第一次中東戦争によってパレスチナの大部分を獲得していました。しかし、ユダヤ教・イスラム教・キリスト教の共通の聖地であるエルサレム一帯にはヨルダンが支配していたため、聖地「嘆きの壁」をエルサレムに持つユダヤ教の不満が高まっていました。
そんな中、無通告でイスラエス空軍機が超低空飛行でエジプト・シリア・ヨルダン・イラクの領空を侵略・各国の空軍基地を奇襲した「レッド・シート作戦」を実行し、短期間のうちにイスラエルは領土を4倍に拡大することに成功します。
このイスラエルによる領地拡大抗争を「第三次中東戦争」と呼んでいます。
この突然の電撃攻撃に驚いた中東各国は、国連安全保障理事会が停戦決議を採択します。ヨルダン・エジプト・シリアの各国は停戦を受諾し、イスラエルもこれを受け入れましたが、結果として戦争が終結しただけで、イスラエルの領土は大幅に拡大したことに変わりありませんでした。イスラエル側はこの戦争を6日間戦争と呼んでいます。
これによってさらに40万人ものパレスチナ難民が新たに生まれ、不便な土地でのキャンプ生活を余儀なくされます。
PLO(パレスチナ解放機構)は第三代議長にファタハというグループのセーヤル・アラファトを選出し、武力でイスラエルと闘争することを基本としてイスラエルに対してテロ攻撃を仕掛けていきました。
イスラエルはこのテロ攻撃の報復としてさらに攻撃を受け、隣接するヨルダンにまで被害が及んでしまいます。
ヨルダンのフセイン国王は、この犠牲を非常に重く受け止め、アラファト議長に対して武装解除を求め、アラファト議長自身もこれ渋々受け入れようとしましたが、PLO急進派やPLO下部組織のパレスチナ人民解放戦線(PFLP)がそれを受け入れず、西側諸国の飛行機を爆撃する「PFLP旅客機同時ハイジャック事件」を起こしてしまいます。これに激怒したフセイン国王はPLOゲリラ追放作戦に乗り出します。
そんな折、シリアがPLO支援を目的としてヨルダンに侵攻してきたことから、全面戦争に発展しそうになりますが、アメリカとイスラエルがシリアを牽制し、エジプトのナセル大統領がPLOの本拠地をヨルダンからレバノン移転させることを条件に停戦を仲介したことで、危うく全面戦争を回避しました。
PLOは、この一連の事件を「黒い九月(ブラックセプテンバー)」と呼び、ファタハが結成した秘密テロ組織にも同じ名前をつけました。この秘密テロ組織は、西ドイツで1972年に開催されたミュンヘンオリンピックでイスラエル選手団を襲撃し、選手団全員を殺害した「ミュンヘンオリンピック事件」を起こしています。
秘密テロ組織はこの後も立て続けにテロ活動やハイジャック事件などを起こし、活動を活発化させていきます。
1973年 日本赤軍の丸岡修と共謀しドバイ日航機をハイジャック
1977年 ドイツ赤軍と共謀しルフトハンザ航空機をハイジャック
また、PLO本部が移ったレバノンでは、国内のイスラム教徒とキリスト教が支配する政党との間で戦闘が起こります。
PLOがイスラム教徒を支援し、シリアも軍事介入し、さらにPLO排除のためにイスラエルがキリスト教側を支援したことからレバノン内戦が勃発します。
このようにして第三次中東戦争停戦後も、別の武力構想が絶えず起こり続けている状況でした。
中東問題って本当にいろんな国が引っ掻き回しているせいで、時系列通りに理解しようとしてもかなり複雑ですよね。でもちょっと時系列がズレていてもいいんです!全部覚えようとしないでください(このブログを読んで思い出す心意気でOK)。 歴史は昔の人が辿ってきた過ちと成功の積み重ねだと思うので、「おいおい、また黒歴史繰り返してるじゃん・・・」と傍観する感覚で読み砕いていくと、結構抵抗なく入り込むことができますよ!
まだまだ続く予定ですので、引き続きお付き合いください。
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